喜久井町生活5

喜久井町のアパートに入って何日か経った日

ドアを誰かが叩く

開けて見ると知らない人間

誰かと思ったら何と向かいの部屋の住人

大家さんから同じ大学浪人がいると聞いてたが彼だった。

話を聞くと彼も二浪、去年は京都で浪人してたと。

生まれは山口県岩国

同じアパートに住んでるのですぐに仲良くなってしょっちゅう行き来した。

しばらく付き合って気が付いたがかなりのナルシスト

自分は凄い美男子だと思い込んでいる。まあそれはどうでも良かったがある日自分の高校の同級生がやって来た。彼はその当時日活のニューフェイスに応募しても通るほどのイケメンだった(結局日活には行かなかったけど)その彼が部屋に来て私に言った。

向かいの彼面白いやつだと、どうしてと聞いたら会った瞬間「お互い顔で苦労するね」と言われたと。

二人で大笑いした。

でも悪いやつじゃ無いのでアパートを出るまで仲良くしてた。

一緒に文学の講演を聞きに行ったり、鎌倉まで遊びに行ったり。同じ予備校だったが予備校では会ったことがなかった。それは自分が行ってないからだが色々と情報は入れてくれた。

彼の部屋から向かいに美容院の女の子達の泊まり込み部屋が有った。窓を開けるとよく顔を合わせるので馴染みになった。男女の関係みたいなことは全く無かったが髪を切りに店に行くことも。美容院なんて行ったのは始めて。

彼とは一年間だけの付き合いだった。

彼は立教大学に自分は中央大学にと浪人生活をめでたく終了し別れた。

それっきり一度も会って無い。

人生ではそんな出会いが何度か有ったが後戻りはやはり無い。