破戒

読書三昧です(笑)
田山花袋に続いて島崎藤村を読み始めた。
まず最初に「破戒」
そしてその題名だが読んでみるまでこの意味を意識してなかった。
なんとなく「破壊」と言うイメージで記憶してた。
ネットでも「島崎藤村破壊」「島崎藤村破戒」両方検索できる。
これを見ると自分だけでなく多くの人が題名を勘違いしてるのではと思える。
最初は題名の意味をあまり意識せず読んでたが
読み進んだら「破壊」ではなく確かに「破戒」だと言うことが分かった。
被差別民の家族に生まれた主人公が父親から受けた「身分を隠せ、それを絶対忘れるな」と言う戒めを破ることだった。
読んだのは初めてだが、そう言えばそんな内容の小説だという事を思い出した。
一昨年の秋、馬籠宿を訪れた時、宿場の中央に大きな屋敷が有りそこが島崎藤村の生家だった。
庄屋、名主、本陣を務めた宿場一番の旧家だ。
そんな家に生まれた人が何故被差別民の小説を書いたのだろうと不思議に思ったが
藤村の経歴を調べると家族に恵まれずかなり波瀾万丈な生涯だったようだ。
差別に関しては昔から世界中に有るようだ、日本の場合も平安時代から存在するらしいが江戸時代から昭和初期にかけての部落民が一番酷い差別を受けたように思える。
今も有るのかもしれないが、自分らの世代では親の世代が何かそんなようなことを言ってた記憶がある程度でそれが何のことか大人になるまで分からなかった。
多分だが、自分らの子供の世代ではもっとこのようなことが分からなくなるのではと思う。そう願う・・
自分より卑しい人種の存在を認めそれを差別しようとする気持ち、その人間のほうがはるかに卑しいはずだが、
そんな制度を創ったのは権力者、民衆を抑え自分の地位を守る為だけのものなのに。
この小説についての感想だが(現代小説によく有る予想できるような)内容に不自然な偶然が多くちょっと甘さを感じるところもあるが、書かれた当時としては画期的なものだったのだろう。
ただ取り上げたモチーフのわりには余り暗さを感じなかった。


それにしても最後の


『御機嫌よう。』
 それが最後にお志保を見た時の丑松の言葉であつた。


これが引っかかる、これはこの場だけの別れの挨拶なのか?永遠の別れの挨拶なのか?
小説だからもちろんこの後の展開はないのだが・・分からない。
この謎がこの小説の一番のポイントなのかもしれない。