勇者たちへの伝言

先日中島さんから頂いた「勇者たちへの伝言」を読んだ。

勇者たちへの伝言 いつの日か来た道 (ハルキ文庫)

勇者たちへの伝言 いつの日か来た道 (ハルキ文庫)

勇者という題名から始まって野球の話に
昔懐かしい阪急ブレーブスの選手や西宮球場が登場する
ブレーブスは勇者という意味
テレビやラジオの放送作家が主人公
主人公が子供時代ラジオで野球中継が始まるとすぐにチャンネルを変える父がいた。
その父と野球を見に行きたいがそんな父に言い出せない
近所の親父に「勇気を持って言え」と言われ実現する
そこから話が始まるが
その父とかつて恋人同士だった朝鮮人の女性との叶わなかった恋
主人公がそれを辿っていくと話がどんどん広がっていく
恋人だった女性が祖国帰還運動に騙され北朝鮮に行く
港に着いた途端に騙された事に気づきその後何十年も絶望の日々を送る
50年も経った後、主人公がその女性から来た手紙を偶然に発見し
父とのことや北朝鮮の生活の実情を知る。
父が何故野球中継を避けたのかその理由も知る。
阪急ブレーブスに実際いた選手や関係者も登場し
数々の感動的な言葉が印象的な小説だった。
読み終わって頭に浮かぶのは自分が小学生の時のこと
その帰還運動が始まった、何年の時からだったかは確かでは無いが
毎年講堂の壇上に何人かの生徒が立ち、全員で送った記憶がある
中で一人だけ話したこともない同級生だったが体格がよく日焼けで真っ黒の男がいたのを覚えている。
彼も向こうに行って大変な苦労をしたと思うが、あの体格としっかりした目を思えばきっと元気に生き延びているだろうと期待したい。
でもあの時彼ら彼女らは言葉も分からない国に本当に行きたかったのだろうか・・
小説の中の女性は最後に危険の中「勇気を持って」脱北に成功する。
自分と同じ小学校から行った人たちはどうしたのだろうか
騙して国に連れ戻し強制労働を現在もさせている国はもちろん悪いが
その運動が始まった時の日本政府もそれを推し進めた責任が有る。