トッパン

今は八王子に移転してしまったが自分らの頃は駿河台に学校があった。
校舎の南門を出て真っ直ぐの路地を100mくらい行くとそこに何軒かの雀荘があった。(今はきっともう残ってないと思うけど)その通りに面した雀荘の脇の狭い路地の奥、木製のガラス戸を開けて狭い階段を登るとそこが我らのたまり場だった。
アメリカ帰りの美人ママがいた。歳は自分らより少しだけ上。10代の時に商社マンに付いてアメリカに渡ったが、日本が恋しくなり旦那と離婚して違う男性と一緒に自分の娘を連れて帰って来て雀荘をやっていた。
ギャンブル好きで、恋多き女性だった。
そのママがある時、新しい恋人と関西にギャンブル旅行に出掛けることになった。
そこで困ったのが、まだ未就学の娘と、雀荘
なぜかママは自分にそれを頼んだ。
娘のほうは、当時同じく大学生だった自分の妹にアルバイトとして預かってもらった。
雀荘のほうは自分が2日間見てた。2日分の売り上げはバイト料として貰う事になってた。
売り上げは2日間で約2万円、当時のバイトとしては破格の額だった。
ところが、2日目の夜、客が帰った後仲間とトッパンを始めたのだ。
トッパンというのは、カードのブラックジャック花札のオイチョカブとほぼ同じ。
それを麻雀の牌でやる。
面子が揃わなかった時や、麻雀に飽きた時ちょっとした賭け事として遊んでた。
それがその夜は全くツキがなく、どんどん負ける、だんだん熱くなって時間の経つのも忘れてしまった。途中パトカーが来て玄関の戸をどんどんやる始末。知らん顔して出なかったが11時以降は営業禁止、近所の誰かが通報したのだろう。
パトカーは電気の消し忘れと思ったのかあきらめて行ってしまった。
朝までやったらとうとうバイト料+持ち金がなくなってしまった。
正当なバイト料で悪銭ではないが、やはり身につかなかった。
勝った相手は、今晩の飯にも困るだろうと2千円恵んでくれた。
その金を持って後楽園で下りて場外馬券売り場に寄り、連勝複式の馬券を買った。
オッズを見ると丁度10倍、入れば2万円戻ってくる勘定・・
そのままアパートに帰り寝て起きたら丁度競馬が始まった。
結果は2着3着が写真判定の1着、3着だった。
今の時代の3連複があれば多分取れた・・
でも取れなくてよかったのかもしれない・・
考えて見ればその後、今まで競馬の券は買ったことがないような気がする。
確かではないが・・